長野県内の各企業で、東日本大震災を受けた避難者の雇用支援の動きが広がっている。企業側が掲げる一定の条件を満たせば被災者のこれまで の職歴や経験などを踏まえて正社員として採用する。東北3県から避難してきた被災者ら約900人だけでなく、県外の被災者も対象とし、雇用面の充実を図る ことで生活再建を後押しする。
ホクトでは、福島県から静岡県に避難した2人を、ブナシメジやマイタケを生産する静岡きのこセンター(静岡県菊川市)で採用することを内定。長期雇用が条件となる準社員として採用し、月末以降にキノコ栽培にあたってもらう。
同社は今夏に佐久市で新工場が稼働するのに合わせて、6月以降に約120人の準社員を新規採用する計画を持つ。このため、新工場の稼働で人材が不足することを念頭に「被災地から避難してきた人の受け入れを進めたい」(高藤富夫専務)と話す。
被災者を正社員として受け入れる企業もある。信州ハム(上田市、中村幸男社長)は、長野県に定住する意向を固めていることを条件に被災者を 正社員として採用する考え。ただ数カ月をメドに定住する場合でも、パート労働者として受け入れる方針で「少なくとも5~6人は受け入れたい」(中村社長) という。
オーダーカーテン製造・販売のラジエル(坂城町)は、縫製の経験者を対象に5人程度の採用を検討している。運営するカーテン専門店「カーテ ンDo!長野店」や坂城工場で働くことになるという。長期間の就労が可能な場合、幹部候補生としての採用も視野に入れる。同社は「被災者の経験を生かして 働ける場を提供したい」(滝沢麻子社長)と話す。
人材派遣大手のパソナは、震災後に宮城県や福島県など東北地域から「長野県内で就職先を求める登録者が増えている」(パソナ・長野の増田啓二支店長)と説明。新潟県や富山県でも同様の動きが広がっており、余震の不安から転居する人が相次いでいるとみる。
県のまとめによると、6日現在、871人の被災者が県内に避難している。今後も増える可能性があり、県や長野労働局では求人情報が被災者に 届くような仕組みづくりを急ぐ。避難者が増えれば避難場所での求人関連の情報提供を進める。県内企業の被災者を対象とした求人情報を、被災地のハローワー クでも検索できるようにする。
- 長野県内企業、震災被災者の雇用へ 条件を満たせば正社員に :日本経済新聞