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同氏によると、菊川氏との決裂につながった疑念が生じたのは7月、月刊誌「FACTA」がオリンパスによる日本の小企業3社の買収について疑問を呈したときだった。この3社は2006年から08年にかけて約700億円で買収された。1社は「ヒューマラボ」というフェースクリームやサプリメントなどのメーカーで、それ以外の2社は、医療廃棄物のリサイクルを行う「アルティス」と、電子レンジ用容器のメーカー「NEWS CHEF」だ。同誌は、売り上げも少なく、特に際立って価値のある資産があるわけでもない非上場企業に対して、オリンパスがなぜ大金を支払うのか不可解だとしていた。
また、この記事は、08年の英医療機器会社ジャイラス・グループの買収についても疑問を表明していた。買収価格は2117億円で、買収発表直前の株価と比較して、58%も高い価格がつけられていた。
ウッドフォード氏は8月初旬に菊川会長と森副社長に会い、記事について尋ねた。ウッドフォード氏によると、菊川会長は心配する必要はないと言ったという。
FACTA誌はこれらの買収について、9月にも記事を掲載した。その後ウッドフォード氏は何通かの書簡を菊川氏と森氏に送った。ウッドフォード氏はそれらの書簡のコピーをウォール・スリート・ジャーナルに提供したが、書簡の真偽と、それらが実際に受け取られたかについて本紙は確証を得ることはできなかった。
ウッドフォード氏は、中でもジャイラスの案件で、買収アドバイザー会社に対して支払われた、高額の報酬について懸念を感じたと述べた。 また同氏は、このアドバイザー会社についての情報が非常に少ないとも語った。
同氏は2週間ほど前にプライスウォーターハウスクーパースに依頼して、この買収について詳しく調査したという。同氏によると先週30ページの報告書がまとまり、本紙はそのコピーとされる文書を閲覧した。
この報告書で、プライスウォーターハウスは、「不適切な行為が行われたと確信することはできないが、現段階では不適切な行為が行われた可能性を排除することはできないと考えられる」としている。また虚偽の会計処理や取締役義務違反などの可能性も考えられると指摘している。
報告書の大半は、ジャイラス買収の際にアドバイザー会社であるケイマン諸島に登記のあるアグザム・インベストメント(Axam Investment)と、ニューヨークに登記のあるアグゼス・アメリカ(Axes America)に支払われた報酬に関するものだった。ウッドフォード氏は両社にコンタクトを取れなかったと言い、本紙も両社の連絡先を確認できなかった。
報告書は「買収の規模及び性質から鑑みて、通常買収総額の1%程度が報酬として適切だと考える」と述べた上で、オリンパスがアグザム及びアグゼスに対し、6億8700万ドルの報酬を払ったことを指摘した。これは買収価格の36.1%に相当する。
また報告書は、これらの買収案件のコストはオリンパスにとって「極めて重要な」ものであり、経営陣による「疑問や重大な関心を呼ぶ」一連の判断の結果であるとしている。
プライスウォーターハウスはこの文書の真偽について、顧客に関する内容には答えられないとして、コメントしなかった。
ウッドフォード氏は12日夜に菊川氏に対しこの報告書とともに、菊川氏と森氏の辞任を求める書簡を送ったという。
同氏が本紙に提供した書簡には、「現状に至ってはもはや擁護できない事態であることが明白であり、これから前向きに進む上での対策として、あなた方2人が取締役会から辞任することが必要」と書かれ、これらの買収案件における「非常に多くの悲惨な誤り、そして並外れてお粗末な判断力」の結果として、株主がショッキングな額の損失を被ったとされていた。
さらに、「もし、あなた方に辞任の意思がないならば、信認義務の下、私は当社のガバナンスに関して持っている基本的な懸念をしかるべき団体に提起することとなる」としていた。
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【インタビュー】オリンパス社長解任劇の背景=ウッドフォード前社長 - WSJ日本版 - jp.WSJ.com