「ハチワンダイバー」柴田ヨクサルVS渡辺明竜王 夢の対局!! 西条耕一記者の観戦記① : popstyleブログ : エンタメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
将棋家元の創始者、一世名人大橋宗桂が徳川家康から駿府城に招かれて対局を披露してから400年。伝統と格式に支えられた社団法人・日本将棋連盟の本部「将棋会館」に現れたのは、週刊ヤングジャンプの人気漫画「ハチワンダイバー」作者、柴田ヨクサル氏と謎のメイドだった。
挑戦を受けて立つ竜王・渡辺明は、20歳で将棋界最高のタイトルである竜王を奪取した天才棋士。攻めて良し、受けて良しのバランスの取れた棋風で知られ、王座・王将の2冠を保持する羽生善治を追う若手棋士のリーダーだ。
現在、渡辺竜王は、竜王戦史上初の4連覇中。優勝賞金3200万円を獲得すること4度。昨年、都内某所に土地を買い、注文住宅を建て、奥様と3歳の柊(しゅう)君の3人で住んでいる。将棋も人生も24歳とは思えないほど手堅い。自宅の本棚の半分が将棋関係、残りが漫画本というほどの漫画好き。指導対局の申し出をノータイムで引き受けてくれた。
さて、本局。ヨクサル氏の過去のプロとの対局から察するところ、アマ四段格とお見受けした。手合は渡辺竜王の飛車落ち。格闘技でいえば、右腕だけを使わないというハンデ戦。プロの側から積極的な攻撃はできないが、アマチュアが腰の入っていない仕掛けをすれば、残る左手によって痛烈な反撃を喫する。トッププロにこの手合で勝てればアマ五段を認められても不思議ない。
対局開始前、ヨクサル氏が緊張していることが手にとるように分かるが、竜王の初手△3四歩に対する▲7六歩を指す駒音は、「ビシッ」と小気味の良い音を響かせていた。
戦形は、ヨクサル氏の「右四間飛車」戦法に見えたが、何と▲2七銀(第1図)である。
将棋史を専門とする筆者も初めて見る新手。さすが子供のころはプロ棋士の養成機関に入会しようかと思ったという腕前だ。
それにしても、右銀は4七の地点に上がるのが将棋の定跡というより常識である。将棋400年の歴史にない手を指され、思わず竜王も首をひねった。