数年前に、自分たちで電力を作りはじめて、
いったいどれくらいの電力ができて、いったいどれくらい使って、いったいいくらで売れるのだろうか?と思って、
実際にやってみて色々わかったことは、
余った電気を売る事が一番難しい、ということだった。
まあ、小さい電力をチョコチョコ買ってたら地域電力会社も面倒くさい気持ちもわかるが、
一番の大きな壁は地域電力会社の言う「前例がない」というもので、
とにかく品質に問題がなくても余った電力は、あらゆる言い訳で買ってもらえず、
出来た電力は自分たちですべてを賄うことにし、結果さらに勉強の日々だった。
西表島で個人レベルで風力発電所やる前例など、あるわけがない。
海外の報道で「東電の問題は慣例主義」と書くのが、よくわかる。
世界では、いまスマートグリッド(次世代伝送網)に注目が集まっている。
オバマが2009年に発表した「米国回復再投資法案」の目玉のひとつであり、
2014年には全世界で17兆円の市場規模と言われているからである。
その後、中国は今後十年で50兆円を投資予定と発表し、いまや日本は完全に出遅れている。
スマートグリッドは、中国語で「智能電網」と呼ばれ世界の耳目を集めている。
電話などの通信業界も、かつては極めて政府に近いところの独占企業の1対1通信が基本だったけれど、
いまは、各々が複数の通信業者から選べて、情報送信で言えばこちらからの1対複数通信なども可能になった。
これから電力も同じようになり、極めて政府に近いところの独占企業から個々への1対1の一方通行送電関係から、
複数の電力業者から各々が選べて、双方向(売電可能)で、1対複数の関係になっていくだろう。
これを「スマートグリッド」と言う。
また、巨大なオフコンからパソコンへと変わっていったように、
発電も、ドンドン小さく個別発電の時代へと変わっていく。
これも、スマートグリッド時代の特徴だ。
危機管理の上でも、発電を分散化するこの方向は極めて正しい。
もう、お分かりだと思うが、ITの次の仕事はエネルギー産業である。
実は、米国での新エネルギー産業の筆頭はご存知ビル・ゲイツ。
東芝などと組んで、小型原発を世界に売り込む先頭にいる。
そして、その個別エネルギーを管理調査する会社のひとつが「グーグル」。
スマートグリッドのトップ企業のひとつで、既に売電認可を得た「グーグル・エナジー社」を設立済みである。
グーグルは、代替エネルギーへの投資会社としてもトップ企業のひとつだ。
今回、米国が福島原発事故を問題視しているのは、小型原発を中心としたこの戦略転換を大きくさせられたからで、
情報戦争の覇者米国の次の戦略が、次世代エネルギー覇権だったのに、白紙に近くなってしまったからであろう。
石油に限らずあらゆるエネルギーも、一国ではなくグローバルで見なければわからない時代にある。
従って、かつての(もしくは現在の)IT産業のように、
基本エネルギーはビルゲイツ、ネットワークはグーグル、国内だと東芝はパーツ作りのひとつの会社というような構図の新エネルギー産業体系も、
ここ1、2年急速に固まりつつあった。
もちろん原発中心で。
あたらしいテクノロジーは、目を見張るものがあるとは常々思うが、そこに溺れてはいけない教訓を得たばかりだ。
どちらがの未来を選ぶのがいいのか、いまは選択の時なのだろう。
それは、人々にとって幸せとはなにか、を個々が真剣に深く考える時なんだと思う。
そして地球の未来は、50年100年ではなく、500年1000年で見なくてはならない。
一方、日本のIT産業は、いまだに株価を気にしながら国内だけのコミュニティサービスやモノを売ってるような会社ばかりなのが、残念である。
ITの先駆者こそが向かう先は、次世代エネルギーなのは間違いなし、いまからでも遅くはない。
どんなに大変でも、例え小さくてもエネルギー産業を考えるべき時がいまだ。
それは、まだコンピュータが世の中に普及する以前のような感じに近く、そこにはスーツを着てる人は誰もいなくて、皆自由な発想を持っていた。
だからいまは、「スーツを着てないけど、エネルギーを仕事にしようとする人」たちに、次の日本の光がある。
フロンティア・スピリッツは、どんな時代もスーツを着ていない。
また、現在の惨状を戦後の焼け野原の復興と比較する人が多いが、
あのときは、焼け野原より、日本の体制が変わったことが、なによりも大きい。
可能な限り「各々が発電」し、「自由に売電」できる未来。
技術的なハードルは越えられても、独占や体制というハードルを越える事が本当にできるのか?
あらゆる言い訳と圧力が押し寄せると思うが、各々の「節電」より各々の「発電」と「売電」の自由に日本の未来の命運があるのではないだろうか。
- TSUYOSHI TAKASHIRO -BLOG-|honeyee.com Web Magazine (via 60rpm)