そこで、第3の方法を提案したい。それは60Hzの電力をつくる西日本の6電力会社(中部電力、関西電力、北陸電力、中国電力、四国電力、九州電力。いうまでもなく沖縄電力は電力を融通できない)と、電源開発や日本原子力発電などの卸売電力会社(注4)が結束しコンソーシアムを結成して、新しい電力会社を関東に作るという方法である。
注4:電源開発の最大出力は1639万KWで、その9割の発電所が西日本にある。その稼働率は7割以下と推定される。日本原子力発電の最大出力は261万KW
この新電力会社は、発電所をすぐに建設する必要はない。単に、中部電力側から60Hzの送電線を関東に向けて延長し、60Hzの電力を供給していくだけだ。送電線を伸ばす鉄塔を新設する必要はなく、東京電力の高圧鉄塔をレンタルして、東京電力既設の50Hz送電線と並列に相乗りさせる。
東京電力は「鉄塔が荷重に耐えられない」として反対するだろうが、25パーセント程度の重量増は設計マージンよりはるかに少なく技術的に何ら問題はないはずだ。また、一部の送電線は、現在の一系統を専用使用のためにレンタルできる可能性もある。高圧変電所(27万5000ボルト以上)だけは新規に設置する必要があるものの、その数は東京電力管内で74か所と多くない。しかも工場集積地区に重点投資することでその数を10カ所以内に絞ることができる。
これならば、政府の許認可などの問題や資材調達が間に合えば、約1400万KW分の電力供給体制を4カ月以内に用意することが可能になるのではないだろうか。顧客は、連続運転が不可欠なハイテク工場や情報通信サーバー会社など。東京電力の事実上の独占体制から脱したいと希望する企業が賛同するかもしれない。
それぞれの顧客が電気機器を60Hz化するのは、大型の施設を建設することと比較すれば、ほとんどコストがかかることではない。直流駆動の電子機器をはじめ、最近ではほとんどの電気機器は50Hz・60Hz両方に対応する。エレベーターや空調設備などに使われている交流モーターのみが影響を受けるが、これらだけ東京電力の低圧電力(別契約のいわゆる「動力」)を当面使用したままにしておけばよい。
”- 計画停電が日本の製造業をさらに弱体化する:日経ビジネスオンライン (via nseki)