太陽を中心に回る地球のような惑星と異なり、宇宙空間を漂う「浮遊惑星」を、名古屋大太陽地球環境研究所の伊藤好孝教授、阿部文雄准教授、大阪大 の住貴宏准教授らのグループが銀河系内で発見し、19日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。木星と同程度の質量で、地球から2万6千光年以内に存在す るという。
惑星は自ら光を放たないが恒星を周回する場合、惑星が軌道上を移動することで恒星の光が変化することなどから発見が可能。浮遊惑星は理論的には存在すると考えられていたが、恒星の光を受けることが少なく存在を実証できていなかった。
グループは、地球から見て2つの星が一直線に重なると、手前の星の周辺空間が虫眼鏡のような役割を果たし、遠くの恒星が実際より明るく見える「重力レン ズ」現象に着目した。恒星がレンズになると遠くの星は2カ月ほど増光するが、惑星がレンズになると増光期間は1~2日程度と短いため、浮遊惑星を探すこと ができる。
2006年から2年間、ニュージーランドの天文台で銀河系中心部の星5千万個を毎晩、10分から1時間おきに撮影。増光変化が2日以内の惑星を10個発見した。これらの惑星が軌道を描いて回る恒星は見つからず、10個のほとんどは浮遊惑星と結論づけた。
検出数の多さから、浮遊惑星は銀河系内だけでも、恒星の1~2倍にあたる数千億個あると推計している。
グループでは、浮遊惑星は恒星の周囲のガスから生まれ、他の惑星との相互作用で重力圏からはじき飛ばされたと推測。住准教授は「予想を超える数で、従来の惑星形成の考え方では説明できない。惑星の形成過程を解明する重要なデータになる」と話している。
<須藤靖・東京大教授(宇宙物理学)の話>浮遊惑星の存在は推測されていたが、直接の観測は難しかった。重力レンズ現象の長期観測という特徴的な方法で、素晴らしい成果を収めた。惑星のように低質量の暗い星がどれくらいあるかも、天文学の重要なテーマだった。
今回の発見が、新たな惑星形成理論につながる可能性がある。
(中日新聞)
- 中日新聞:宇宙空間で軌道なく漂流 名大など「浮遊惑星」発見:社会(CHUNICHI Web)