実用船の1隻目は、先に実験船「飛翔」にてデータを検証し建造されたTSL-A型船で、海上での速度は40ノット近い時速約70kmの航行を可能としており、アルミ合金製としては世界最大級の超高速貨客船として運航される予定であった。船名は一般から公募し、東京都知事石原慎太郎の典子夫人により、「SUPER LINER OGASAWARA」(スーパーライナーオガサワラ)と命名された。海上試運転では42.8ノットを記録した。
当初の運航は東京 - 小笠原航路が予定されておいたが(片道約25.5時間かかるところを約16.5時間に短縮し便数も年間92往復に増やすことができる)、2005年(平成17年)の原油価格高 騰の影響をうけ、軽油を使用するTSLは一度の往復にかかる費用が2,500万円近くとなり、運航費用に4倍近くの差(従来の重油を使用する船舶は一往復 600万円程度)ができてしまうことが分かったため(TSLが従来船の4倍費用がかかることは計画当初から分かっていた)、支援を予定していた東京都が撤 退。それに続き国土交通省も撤退し、運航会社の小笠原海運は、支援が受けられないのならば運航しても半年で会社が倒産するということで、TSLの受け取りを拒否した。「SUPER LINER OGASAWARA」は運航されないまま廃船になる可能性もあり、2009年(平成21年)4月現在、建造所である三井造船玉野事業所に繋留されたままである。なお、TSLを保有するテクノ・シーウェイズ(三井造船系企業)は小笠原海運に対し契約不履行で損害賠償を求める提訴をした[4]ものの、小笠原海運側はTSLはコストが高く、国の支援が受けられなければ経営が成立しないことは最初から国土交通省は承知していた筈であるとして全面的に争う構えを見せている。
小笠原諸島(父島列島と母島列島)には自然保護の目的もあり空港計画が白紙状態である[5]ため、公共交通手段は船舶による渡航しかなく、6日に約1便運航され片道25時間かかる客船「おがさわら丸」か、不定期運航で片道約45時間の貨物船「第二十八共勝丸」 を利用するしかない。そのためTSLの運航は本土との往来が活発になるため期待されていた。東京都や国土交通省もそれにあわせて、利用者が増えるとの資料 をもとに説明し、施設などを宿泊できるよう受け入れ態勢を整えるよう求めたが、就航が白紙になったため、島民には施設増設などの経済的負担だけが残る結果 になった。その後、2006年(平成18年)には国土交通省と東京都は改めて空路整備の検討に入っている。[6]
今後の構想 [編集]
2005年11月の一部報道によると、在日米軍再編によりグアムへ移転する予定の海兵隊の高速輸送艦(HSV)として、TSLを転用する案が検討されている模様だが、実現可能性は不透明という。
2006年6月27日に国土交通大臣(当時)の北側一雄が和歌山県日高港より淡路島間を往復する試験航海に試乗し、時速80km以上での安定した航行について「様々な方向で活用したい」と語りTSLのアピールを行った。
その後長らく三井造船玉野事業所(岡山県玉野市)に係留されていたが、2011年5月17日から31日までの間、東北大震災で被災した宮城県石巻市の石巻港に寄港させて、被災者に無料で1回当たり最大181人、延べ2400人程度を受け入れ1泊2日でバイキング形式の夕食、シャワーなどを提供することになった[7][8][9]。
”- テクノスーパーライナー - Wikipedia