広島が原爆で壊滅した5日後の廃虚の航空写真と現在の地図を重ね合わせ、現存する建造物などを表した「ヒロシマ被爆地図」を、原爆資料館資料調査研究会メンバーの竹崎嘉彦さん(52)が制作した。地理情報システム(GIS)を駆使し、爆心地から半径約2キロに及んだ全壊全焼の地域に焦点を当て明示した。全容は中国新聞のホームページに掲載している。(編集委員・西本雅実)
地理学が専門の竹崎さんが、広島大原爆放射線医科学研究所に在籍していた2002年に米国立公文書館から入手した米軍撮影の航空写真を基に作成した。 1945年8月11日に高度約7500メートルから撮られた廃虚の精細な画像(1枚は約23×46センチ)をデジタル化。GISを使い、緯度と経度を与え、国土地理院発行の「数値地図2500(空間データ基盤)」の座標と重ね合わせ、廃虚に現在の町丁界や街区を表した。
さらに、広島市が96年に刊行した「ヒロシマの被爆建造物は語る」などを参照しながら、現存する建造物や学校・団体が建立した慰霊碑、モニュメント、原爆被災説明板の設置場所を確かめ、計111カ所を記入。推計死没者は45年末までに13万~15万人に上り、爆心地の半径2キロ内だけで4万3340戸の全壊全焼をみた原爆の威力と悲惨さを伝えている。
竹崎さんは「市民や広島を訪れた人たちが平和記念公園にとどまらず、原爆の惨禍と平和への誓いを刻む場所を歩いて知る地図として使ってほしい」と呼び掛け、今回盛り込めなかった慰霊碑や被爆樹木をさらに加えることにしている。
<竹崎嘉彦制作 「この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図2500(空間データ基盤)を使用した。(承認番号 平22業使、第222号)」>