この頃、福島市でさえ放射線量が 5 μSv/h くらいありました。放射線量の測定に加えて、その成分の 1~10% 程度が半減期 30 年の Cs 137 であるということも、KEK の測定なんかで分かりつつありました。ということは、福島市より数倍程度高い放射線量の地域では、0.5 μSv/h 程度が長期にわたり継続するということです。0.5 μSv/h が 3 ヶ月間継続すると、約 1 mSv になります。一方で、日本の法律で定められている放射線管理区域が 3 ヶ月で 1.3 mSv の場所なので、この数値を超えるような場所はいくらでも出てくるということです。法律をそのまま適用すると、居住不可能な地域がボコボコ出てきます。
これって単純な算数で原発周辺地域の今後を概算できるのですが、TV や新聞が 3 月に報じることはありませんでした。別に報じる義務はありませんし、僕以外の国民の興味が何なのかも知りません。でも、将来の見通しがどうなのか知りたい 層ってのは少なからず存在すると思うんです。けどそういう話が出てこない。「直ちに健康に影響はない」という発表を右から左に垂れ流すだけ。
4. 日本の報道はこうであって欲しい
以上、3 つの例を挙げて僕の不満をダラダラと書きました。要は、独自にデータ収集と解析と計算をやって、政府発表のコピペに終わらない、国民の欲しがっている情報を報道機関が伝えろ、というのが僕の文句です。決して簡単な作業ではないかもしれませんが、専門家にしかできない特殊な作業というわけでもありません。実際、twitter を眺めていると、物理屋じゃない方だって様々な分析や解析をされています。
こういう情報を自分のものにしなくては、記者会見でも鋭い質問なんてできないでしょう。例えば「浪江町と飯舘村の避難状況はどうなっているのか」なんて質問も、政府発表のデータをちゃんと見ていれば 3/20 頃には出てくるはずです。
大学院の博士課程まで進んでも、新聞社や TV 局に就職したいという人は周りにほどんどいませんでした。もっと理系の博士が色んな分野に進出しないと、やっぱり駄目ですね。
”- 今さら放射線管理区域がどうこうと騒いでいるが… - 宇宙線実験の覚え書き (via nakano)