ニッポニテス Nipponites yezoceras の生態復元想像図
通常のアンモナイトの殻は同一平面に螺旋に巻いた渦巻状の形態である。ところが中生代も後期の白亜紀に入ると、「異常巻き」と呼ばれる奇妙な形の種が数多く見られるようになってくる。細長く伸びたようなものや、紐がもつれたような非常に複雑な形状のものなど、様々な形態が現れるのである(ニッポニテスが有名。右の画像参照)。これらは過去の研究者をひとしきり悩ましたものである。そうして、これを、系統進化上の“寿命”なるものが尽きることで引き起こされた一種の末期的な畸形(きけい)の症状であると見なすのが、旧来の説であった。しかし今日的知見では、浅海域が発達した白亜紀という時代の環境に因を求め、そこに生じた複雑なニッチ(生態的地位)に適応して様々な生活型のアンモナイトが分化した結果であると捉えられている。 なお、一見不規則に見える異常巻きアンモナイトであるが、ニッポニテスを含むいくつかの種では海中に浮遊した状態で殻口の向きが一定の範囲に収まるように成長方向を調節していた、と仮定することでコンピュータシミュレーションで再現でき規則性があることが確認されている。