被災30代夫婦 シャワー浴びるためラブホ入り夫婦生活蘇る
宮城県七ヶ浜町の避難所に避難していた30代の男性には悩みがあるという。「こんなことをいうと、家族を失った人たちの手前、不謹慎かもしれませんが」といいながら、こう続けた。
「避難所に来て3週間くらいはまったく“その気”が起きませんでしたが、落ち着きを取り戻すにつれ、性的な欲求がわくようになりました。でも、避難所では人目がありすぎて、妻とキスするどころか、手をつなぐのさえはばかられる。そこで、思い切って妻をラブホテルに誘ってみたんです」
彼のいる避難所は、360人ほどが避難している。夫婦2人に与えられているスペースは敷き布団2枚ほどの広さで、手を伸ばせば隣の家族に届いてしまう状態。こうした状況から、“束の間の夫婦生活”を取り戻したいという人たちも、ラブホテルに向かっているのである。
名取市内のラブホテルは、仙台市内からも比較的近いためか、記者が仙台市内の避難所で取材をしていた際も「名取市に、500円でシャワーを浴びさせてもらえるラブホがあって、夫婦で行く人が多いみたい」という話を聞いた。
しかし、妻のなかにはラブホテルに行くことに抵抗を感じる場合もあるようだ。
「最初、夫にこっそり“ラブホに行こう”といわれたときは、“エーッ、なんでこんなときに?”と思いました。夫婦でラブホなんて利用したこともなかったし、そもそも何年もしてませんでしたから。
でも、お風呂にも入れるというので行ったんですが、2人で体を合わせると、なんともいえない安心感がありました。変な言い方ですけど、地震の後、初めて“ああ、生きてるんだな”という実感を感じたような気がします」(30代・女性)
人間が生きていくうえで、心を許せる人と自分たちだけの時間を過ごすことがどれほど大切か―それを実感させられる言葉だ。
※週刊ポスト2011年4月22日号
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