放射性物質:工業製品も風評被害…福島県検査に業者が殺到 - 毎日jp(毎日新聞)
福島第1原子力発電所事故の影響で、自動車部品やかばんなど工業製品までも敬遠され、福島県内の製造業者らは風評被害に苦しんでいる。県が4日から始めた工業製品の放射性物質汚染を調べるスクリーニング検査には、県内の業者から予約が殺到。製品1万個の検査を要望する業者や、取引先から「安全証明書がなければ契約を打ち切る」と通告された業者もいる。県職員からは「工場内で作った製品に汚染の心配はないのに」と過剰反応を疑問視する声もある。【内橋寿明】
◇職員困惑「心配ないのに」
工業製品の検査は、県内企業からの強い要望を受けて県が独自に実施を決めた。検査場は郡山市の工業団地にある工業製品の試験研究機関・県ハイテクプラザ。精密機器を持ち込んだ県南部の業者は「証明書の添付を顧客から求められた」と頭を抱え、「次の検査日はいつになりますか」と切羽詰まった様子で県の担当者に質問していた。
製品1万個の検査を要望した医療機器メーカーは、取引先に全数検査を求められた。あるかばん製造業者も大手百貨店から「今後は安全が確認できなければ購入しない」と通告されたという。家内工業で手作り製品を出荷してきたが「国や東京電力がかばんまで補償してくれるとは思えない。大口の顧客を失えば倒産するしかない」と嘆く。
県によると、4、5日だけで予約は既に100件を超え、電話による問い合わせは約400件に上る。検査に持ち込まれるのは注射器などの医療機器、自動車のメーターやエンジン部品、掃除機や着物などさまざまだ。
だが、測定器は国から借りた1台だけで、検査できるのは1日数社。1社あたり5品と制限したため、繰り返し検査を希望する業者も多く、検査終了のめどは立たない。
検査責任者の大越正弘・主任専門研究員は「製品に放射性物質がしみ込むことはなく、人体に影響があるとは考えられない。屋内で作った製品まで検査する必要があるのか」と疑問を投げかける。県によると、県内には約9000の製造業者があり、出荷額は年間約5兆円で東北地方最大。大越さんは「風評被害が続けば損害額は計り知れない」と表情を曇らせる。